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精神科の通院治療だけでは行き詰まりを感じる方へ|お薬とカウンセリングの違い・役割について(公認心理師が解説)

カウンセリング  / 精神疾患・精神障害

精神科・心療内科の通院治療だけでは何か足りないと感じる方へ|お薬とカウンセリングの違い・役割について公認心理師が解説

精神科や心療内科に通院し、医師による診察・診断・精神療法、さらに薬物療法を受けているけれど、

  • 「根本的には何も変わっていない気がする」
  • 「薬を飲んでいる間は、初めの頃の副作用も大分治まり、楽になっている気がする」
  • 「先生と色々話したり聞いたりしたいことはあるけれど、時間が短くて十分にできない」
  • 「仕事や人間関係の悩みについては、以前と変わっていない気がする」

などのように感じている方は少なくないのではないでしょうか。

専門医による診療(診察・診断・薬物療法、精神療法等)は最優先されるべき選択肢であり、大変重要な役割があります。
そして、薬物療法・お薬にも治療のための大切な効果があります。

その一方で、短い診察時間(再診では5~10分が通常です)の中では、仕事や家庭、人間関係の悩み、生きづらさの背景、再発予防まで十分に先生と相談できないことも事実です。

本記事では、通院治療だけでは何かが足りないと感じている方へ、専門医による診察やお薬と、カウンセリングそれぞれの役割、併用のポイントなどについて、公認心理師が解説します。

【本記事のポイント】

通院治療の役割
  • 察時間が短くても、症状や治療方針の確認、お薬の調整などは大変重要
  • 薬には、つらい症状をやわらげ、休養を促し、生活を改善する効果がある
カウンセリングの役割
  • 時間を掛けて、認知(物事の捉え方・考え方)を見つめ直し、悩みや生きづらさの根本原因にアプローチできる
  • 仕事や人間関係に関わる辛さや復職不安、再発予防のためには、カウンセリングによる継続的な対話が効果的


このように、通院治療(お薬)とカウンセリングは、相互補完的に治療効果を促進させることができます。

通院治療だけでは行き詰まりを感じるのは?

  • 「通院治療を継続し、眠れるようにはなったけれど、会社に行くことへの不安は残っている」
  • 「薬で気分は少し軽くなったけれど、人間関係のしんどさは変わらない」

このように感じるとき、「通院治療だけでは行き詰まりを感じる」方もおられるのではないでしょうか。

精神科医療の現場は大変厳しく、一人の精神科専門医が、一日に40~60人もの患者さんの診療をこなさなければなりません。

そのため、再診における診察時間は、5~10分前後にならざるを得ないのが一般的です。
その中で、症状の確認、お薬の調整、生活への影響の把握、今後の治療方針についてなどの重要な事項が見極められます。

しかし、限られた時間の中では、今現在抱えている苦しさの背景や根本原因、日常生活場面における具体的な事柄などについて丁寧に扱うことには限界があります。

そのため、
「通院治療だけでは行き詰まりを感じる」背景には、【精神科専門医による薬物療法を中心とした診療の役割】と
【カウンセリングにおいて時間を掛けて丁寧に扱うべき役割】とが、相互補完的に別にあるといえるのです。

短い診療時間でもできること

「再診5~10分診療」というと、不十分な印象を持たれる方も多いかもしれません。
しかし、精神科・心療内科の診療時間が短くなりやすい背景には、社会情勢や制度上の事情や背景があり、その制約の中で最善を尽くされている医療従事者の方々の努力があります。

再診では、睡眠や食事、症状の変化、前回からの経過、お薬の効果や副作用などを確認し、必要な調整を行います。
また、短時間の診察でも、患者さんご本人が要点をまとめたメモを持参したり、優先度を決めて先生とお話しされることで、有意義な時間とすることが可能となります。

決して長くはない診療時間ですが、カウンセリングをはじめ、それを補完(カバー)するための社会資源も様々ありますので、ご自身にとって最善のものを選択いただければと思います。

お薬の役割

薬を飲む女性

お薬には、辛い症状を和らげる役割があります。たとえば、強い不安、不眠、抑うつ、焦り、身体症状などが続いているとき、お薬によって症状が軽くなることで、少し休めるようになったり、生活の改善がしやすくなったりします。

一方で、薬だけで悩みの背景や根本原因が解決されたり、長年抱え続けた来た生きづらさが解消されるとは限りません。
薬物療法はとても重要ですが、症状を和らげることと、生きづらさの背景や根本原因にアプローチすることは別であることも少なくありません。

カウンセリングの役割

スマホでのカウンセリングの活用

 

カウンセリングでは、今現在置かれている状況や直面されている課題などを整理し、その課題や悩みの背景、根本原因についてアプローチしていきます。
何が辛くさせてしまうのか、どのような場面でしんどさが増してしまうのか、同様の悩みが繰り返されやすい構図があるのだとしたら、それはなぜなのかなどを、対話の中で少しずつ紐解き、整理していきます。

たとえば、

  • 職場のストレスを我慢して、いつも限界まで溜めてしまう
  • 人間関係で自責や自己否定をしてしまいやすい
  • 休職中だが、復職を考えると不安が強くなる
  • お薬で一時的に症状が緩和されても、根本的には変わっておらず、同じような苦しさを繰り返しそうで怖い

などについては、カウンセリングを通して丁寧に取り上げることが望ましいテーマといえるでしょう。

カウンセリングは、薬の代わりになるというよりも、薬の効果を補い、治療効果を促進していくための継続的な伴走支援と表現することができると思います。

薬とカウンセリングの役割について

お薬とカウンセリングは、そもそもの役割が異なります。

薬は、つらい症状を軽くして休養を促し、生活改善のサポートを行います。
カウンセリングは、悩みの背景や考え方・反応のパターンを整理し、今後の向き合い方を一緒に考える伴走支援といえます。

たとえば、不眠や不安の症状が強くて日常生活そのものが苦しいときには、薬物療法が優先されることがあります。
一方で、症状が落ち着き、「なぜいつも同じような職場のストレスでつまずいてしまいやすいのか」「症状が落ち着いた後、どのように再発予防を考えていくとよいのか」などのテーマについては、カウンセリングの方が取り組みやすいといえます。

薬とカウンセリングを併用による相互補完効果

お薬とカウンセリングを併用する意義は、症状の軽減と、背景や根本原因へのアプローチを併せて進めやすいことです。

薬によって眠れるようになったり、不安が緩和されたりすると、気持ちや状況を振り返る余裕が生まれやすくなります。
そこでカウンセリングを併用すると、何が負担になっていたのか、どのような場面でつらくなりやすいのか、今後どのように向き合っていくとよいかなどを考えやすくなります。

また、診察時間の中では話しきれない仕事や家庭、人間関係、復職不安、再発予防などについて、時間を掛けて丁寧に、継続して相談できることも、併用の大きな意味です。

通院治療とカウンセリングの併用の勧め

通院中の方がカウンセリングを併用されることで治療効果が促進されやすいテーマには、次のようなものが挙げられます。

  • 仕事や職場の人間関係に関するストレス
  • 家族やパートナー関係のしんどさ
  • 復職や再発予防への不安
  • 薬物療法(お薬による治療)では緩和されにくい生きづらさ
  • 振り返ると、同様のつまずきを繰り返してしまっているパターン
  • 短い診察時間では上手く言葉にしきれずに伝えきれない悩みがあるケース

このようなテーマについては「お薬による治療」に加えてカウンセリングを利用され、継続的な対話を通して取り組んでいくことがお勧めです。

こころケアでも、初回のご相談では「今どのような状況で何が起きていて、何が生きづらさにつながっているのか」を整理し、今後の進め方について一緒に考えさせていただきます。継続して受けることで、表面的な不調だけでなく、その背景要因や根本原因を紐解き、アプローチしていくことが可能となります。

 

このようなときは主治医や専門家に相談を考えたい

次のようなときは、主治医や専門家に相談してみてもよいタイミングです。

  • 薬で少し楽にはなったが、仕事や人間関係のつらさが残っている
  • 毎回の診察で話したいことがまとまらず、十分に伝えられない
  • 復職や再発予防について継続して整理したい
  • 同じ不調やつまずきを繰り返している
  • 「このまま薬だけでいいのか」と不安を感じている
  • 診断の有無にかかわらず、今の状況を整理したい

また、症状が強い、眠れない・食べられない状態が続く、強い希死念慮があるといった場合には、早めに医療機関へ相談することが大切です。

よくある質問

はてなマーク。よくある質問

Q1. 診察時間が短いのは、ちゃんと診てもらえていないということですか?

必ずしもそうではありません。再診では、症状の確認や薬の調整などを短時間で行う運用が一般的なこともあります。短い時間でも、中身のあるやり取りをすることは可能です。

Q2. 薬を飲んでいるなら、カウンセリングは受けなくてもいいですか?

必ずしもそうとは限りません。薬には症状をやわらげる役割がありますが、仕事や人間関係、生きづらさの背景、再発予防の整理には、カウンセリングが役立つことがあります。

Q3. カウンセリングを受けるなら、薬はやめた方がいいですか?

自己判断で薬をやめることはおすすめできません。薬とカウンセリングは役割が異なるため、必要に応じて併用されることがあります。薬の調整は主治医と相談しながら進めることが大切です。

Q4. 通院中でもカウンセリングを受けられますか?

はい。通院を続けながらカウンセリングを受けることはできます。診察と並行して、仕事や人間関係、復職不安、生きづらさの整理を継続的に行うことができます。

まとめ

オンラインカウンセリングを受ける女性

通院治療だけでは行き詰まりを感じるとき、その背景には「診察の役割と、自分が整理したいテーマが少し違っている」ことがあります。診察には症状の確認や薬の調整をはじめ大切な役割があり、薬にはつらさを和らげる役割があります。
一方で、仕事や人間関係の悩み、生きづらさの背景、復職不安、再発予防などは、カウンセリングにおいて継続的な対話を通して整理しやすいテーマです。

通院中であっても、「薬で少し楽になったけれど、まだ整理したいことがある」「短い診察時間では話しきれない」と感じている方は、一人で抱え込まずに、ぜひご相談ください。
初回では、今の状態や困りごとを整理しながら、今後どのように向き合っていくとよいかを一緒に考えさせていただきます。


記事監修

公認心理師 櫻井 良平

監修者写真兼カウンセラー写真

国家資格
  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • キャリアコンサルタント
  • 社会福祉士
  • 保育士
所属学会等
  • 日本公認心理師協会
  • 本公認心理師学会
  • 日本認知療法・認知行動療法学会
  • 日本発達障害支援システム学会
    (第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
  • 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
  • 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
  • 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
  • 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
    (開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)