大人の発達障害とは?特徴・仕事や人間関係での困りごと・診断・相談先について(公認心理師が解説)
大人の発達障害|特徴や困りごと、診断、カウンセリングについて(公認心理師が解説)
- 仕事で同じようなミスを繰り返してしまう
- 人間関係で誤解されやすい
- 頑張っているのに周囲と同じようにできず生きづらさを感じる
そうした状態が続いているとき、「大人の発達障害」という言葉が気になる方もいるかもしれません。
大人の発達障害とは、子どもの頃からあった発達特性が、大人になってから仕事や人間関係、生活の困りごととして表面化し、そこで初めて気づかれるケースを含む言い方です。
この記事では、大人の発達障害でみられやすい特徴や困りごと、二次障害、診断の流れ、相談先について、公認心理師の立場からわかりやすく解説します。
【この記事のポイント】
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大人の発達障害は、子どもの頃からの発達特性が大人になってからの困りごととして表れ、初めて気づかれることがあります
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仕事や人間関係をはじめ、生活上の困難さとして表れやすいのが特徴です
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発達特性そのものだけでなく、抑うつや不安、自己否定などの二次的な不調(二次障害)が重なることもあります
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診断は医師が行います
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通院治療に加え、事前に医師の同意を得た上で、特性による困りごとや生きづらさの軽減のためにカウンセリングを併用ことがお勧めです
大人の発達障害とは

大人の発達障害とは、発達障害の特性が子どもの頃からあったものの、大人になってから仕事や人間関係、生活上の困りごととして表面化し、そこではじめて認識されるケースを含めた言い方です。大人になって突然発達障害になるわけではありませんが、環境の変化や役割の増加によって困りごとが目立つようになり、強く表れてくるということです。
現在、日本で大人の発達障害として話題になりやすいのは、主にADHDやASDに関連する特性です。ただし、実際には一人ひとりの特徴はさまざまで、診断名だけでは説明しきれない生きづらさや困りごとが重なっていることもあります。
大人になってから気づくことがあるのはなぜか
子どもの頃は家族や学校の支えがあり、大きな問題として表れなかった方もいます。また、学生時代は何とか乗り切れていたり、周囲に合わせる努力で対応できていたりする中で、特性が見えにくいこともあります。
しかし、就職、異動、結婚、育児、介護など、大人になると求められる役割は増えます。複雑化、多様化し、自立して仕事や生活を送らなければならなくなります。自分で段取りを組む力、対人調整、マルチタスク、継続的な自己管理が必要になることで、それまで見えにくかった困りごとが表面化してくることがあります。
また、発達特性そのものより先に、不安や抑うつ、職場不適応などの二次的な不調(二次障害)がきっかけで受診につながり、気づかれることも少なくありません。
大人の発達障害でみられやすい特徴
不注意や段取りの苦手さ
以下のような特徴がみられることがあります。
- 忘れ物が多い
- 期限の管理が難しい(大学の講義やレポート、仕事の納期などに遅れがちになる)
- 優先順位がつけにくい
- 細かなミスが重なりやすい
マルチタスクや切り替えの難しさ
以下のような特徴がみられることがあります。
- 複数のことを同時に進めなければならない場面で混乱しやすい
- 急な予定変更で頭が真っ白になる(急な変化への対応が苦手)
- 切り替えに時間がかかる
対人理解やコミュニケーションのズレ
以下のような特徴がみられることで、対人関係における困りごとを抱えやすい方もいます。
- 相手の意図(相手の表情や感情等)を読み取りにくい
- 言葉をそのまま(字義どおりに)受け取りやすい
- 距離感の取り方がわかりにくい
感覚過敏や疲れやすさ
以下のような特徴がみられることがあります。
- 音や光(感覚の過敏さ)
- 人混みに疲れやすい
- 気を遣いすぎて消耗しやすい
仕事で起こりやすい困りごと

成人期の発達障害特性は、仕事の場面で特に表れやすいことがあります。
たとえば、以下のような困りごとが起こりやすいです。
- 報連相のタイミングが難しい
- メールや事務作業で抜け漏れが出やすい
- 優先順位がつけにくく何から手をつければよいかわからない
- 複数の指示を同時に受けると混乱する
- 細かい確認作業が続くと集中力の持続が難しい
仕事が上手くいかないと、「努力不足だ」「社会人として失格だ」「自分はダメだ」などと自分を責めやすく(自責や自己否定)なります。
しかし、公認心理師資格をはじめ、精神保健福祉士や社会福祉士を有する私は、困りごとは単なる根性論や精神論の問題で片づけられるものではなく、「誰でもが有する個性の延長線上に位置づけられる発達特性」と「環境」との相互作用(ミスマッチ)として理解した方がよいと考えています。カウンセリングを通じて、ご相談者の皆様にそのようにお話ししております。
人間関係で起こりやすい困りごと
人間関係では、以下のような困りごとに直面しやすい傾向があります。
- 相手の表情や言外の意味(言葉通りの表現に隠された本当の意味、本音)を想像しようして疲れてしまう
- 冗談や曖昧な表現をどう受け止めてよいかわからない
- 伝え方がストレートすぎて誤解される
- 逆に気を使いすぎて消耗する
このようなズレが続くと、「自分だけ周囲と違う気がする」「なぜいつも人間関係が上手くいかないのかわからない」「自分には何か問題があるのだろうか」などと感じやすくなります。
二次障害とは
大人の発達障害を考える上で大切なことの1つが、二次障害です。
二次障害とは、発達特性そのものというより、長年の生きづらさや失敗体験、対人関係のつまずきなどが積み重なることで引き起こされる、抑うつ症状や不安、自責・自己否定、強い緊張状態、ストレス過多、体調の悪化、結果としてのひきこもり、休職や離職などの二次的な不調を指します。
「発達障害かどうか」だけに意識が向くと、今現在のつらさや二次的な不調(二次障害)が見えにくくなることがあります。
今現在、まさに大きな苦しさやしんどさが続いているような場合には、まずはそのつらさへの対処や支援が重要です。
診断はどのように行われるのか

「自分はもしかしたら、大人の発達障害なのかもしれない」と思ったときでも、自己判断は決してしないでください。
診断は医師のみが行い、現在の困りごとだけでなく、子どもの頃からの特性や、成育歴、家庭や学校、職場などでの様子などを含めて総合的に判断されます。
また、発達特性と似た困りごとは、不安や抑うつ症状、睡眠不足、強いストレスなどでも起こり得ます。
そのため、「当てはまる特徴がある=発達商大である」とは限りません。
治療や支援、相談先について
大人の発達障害に関する支援は、お一人おひおとりの状況に応じて、医療機関やカウンセリング、就労支援機関、発達障害者支援センターなど、複数の機関や専門家(社会資源・支援先)が連携して行われることがあります。
医療行為(診察・診断・薬物療法、精神療法、環境調整等)については医療機関で専門医が担い、生活面やお仕事上の場面における困りごとについては、カウンセリングや就労支援機関、発達障害者支援センターなどが担うなどの形です。
大切なのは、診断を下すことでは、「いま何に困っていて、それに対してどのような支援が適切であるのか」を判断していくことです。
また、こころケアのカウンセリングでは、表面化された生きづらさだけでなく、その背景にある根本原因を対話を通して丁寧に紐解き、根治療法的なアプローチが行えることが特徴です。その方の持つ、強みや長所、特長や魅力、成功体験等も大切にしながら、専門的にアプローチしていきます。
通院中にカウンセリングを併用する意味
大人の発達障害やその特性が困難さにつながっている場合、通院しながらカウンセリングを併用することで、通院治療効果を後押しする効果が期待できます。
特性そのものを変えるのではなく、自分自身の得意や不得意(強みや弱み)、特性や苦手な場面と対処法等を明らかにすることで、仕事や人間関係でどのようにつまずきやすいのか、どのような場面で強く表れやすいのか、何が自己否定につながっているのか等を紐解き、整理していきます。
必要に応じて、職場や友人等に、自分の特性の一部分を伝え、理解してもらったり配慮してもらったりすることによって、生きづらさの緩和・軽減が期待できます。
こころケアのカウンセリングでは、その自己理解を対話の中で深め、困りごとのパターンを見つけ、ご相談者に最適な取り組み方を相談し、具体的な対処法についても考えさせていただきます。
初回カウンセリングでは、「今何に困っているのか」「困りごとが、仕事や人間関係のどのような場面で起きやすいのか」などを整理し、今後のアプローチ方法について一緒に考えていきます。カウンセリングを継続していくことで、表面的な困りごとだけでなく、長年抱えてきた生きづらさの背景や根本原因、根治療法的なアプローチ方法も見出していきます。
このようなときはぜひご相談ください

次のような状態が続いているときは、相談を考えてみるよいタイミングといえるでしょう。
- 仕事で同じようなつまずきを繰り返している気がする
- 人間関係で誤解や孤立が続いている
- 自分だけ周囲と同じようにできない感覚が強い
- 生きづらさや自責感・自己否定感が長く続いている
- 自己肯定感がとても低いと感じる
- 休職や離職を繰り返している
- 診断の有無にかかわらず、まずは自分自身についての理解を深めたい
医療機関を受診されるかどうかも含めて、「これまでの困りごと等を振り返り整理したい」「自己理解を深めたい」という方にもカウンセリングの利用がお勧めです。
よくある質問

Q1. 大人になってから発達障害に気づくことはありますか?
あります。子どもの頃は周囲の支えや環境によって目立たなかった特性が、就職や人間関係、自立生活の負担が増えることで、大人になってから表面化することがあります。
Q2. 大人の発達障害かどうかは自分で判断できますか?
診断はあくまでも医師が行いますので、医療機関を受診されてください。今現在の困りごとだけではなく、子どもの頃からの特性や成育歴、学生・社会人時代のエピソードなども含めて、総合的に診断していきます。
Q3. 発達障害があると仕事は続けられませんか?
必ずしもそうではありません。まず大切なのは、自分の特性や困りごとを整理し、自己理解を深めることです。
そして、職場や業務内容を精査し、職場の方からの理解や配慮が得られると、働きやすく、継続しやすくなります。
Q4. 通院しながらカウンセリングを受けてもよいですか?
はい。通院を続けながら、仕事や人間関係、生きづらさ、自責・自己否定感、自己肯定感の低さなどについて、カウンセリングを通して整理していくことができます。それによって、通院治療効果を促進することが期待されます。
専門医による薬物療法や精神療法を受けながら、診察時間の中だけでは扱いきれないような生活上の困りごとや、その背景、根本原因等について、継続的な対話を通してアプローチし、改善につなげていくことが可能です。
まとめ

大人の発達障害とは、子どもの頃からの発達特性が、大人になって仕事や人間関係、生活上の困りごととして表れ、そこで初めて気づかれることを含む言い方です。
仕事上のつまずき、対人関係のズレ、自責・自己否定感、自己肯定感の低さや生きづらさとして表れやすく、二次的な不調(二次障害)が重なることもあります。
診断については医師のみが行いますが、診断の有無にかかわらず、今ある困りごとを相談・整理し、改善していくためには、カウンセリングをはじめとした複数の社会資源があります。
仕事や人間関係で同じようなつまずきを繰り返している方、自責や自己否定に苦しまれている方、長年生きづらさを抱えて来られた方等は、一人で悩まれ続けずに、ぜひご相談ください。
初回のカウンセリングでは、今起きている困りごとや生きづらさを整理し、今後どのように継続して取り組んでいくことが最適であるのかについて、一緒に考えさせていただきます。
記事監修
公認心理師 櫻井 良平

国家資格
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- キャリアコンサルタント
- 社会福祉士
- 保育士
所属学会等
- 日本公認心理師協会
- 日本公認心理師学会
- 日本認知療法・認知行動療法学会
- 日本発達障害支援システム学会
(第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
- 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
- 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
- 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
- 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
(開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)